海の日に、水辺のそばで心がほどける理由と暮らしへの取り入れ方
水辺のそばにいると心が落ち着くのは気のせいではありません。18か国の調査でも、海や川などの自然の水辺を訪れる頻度が高い人ほど心の健やかさが高いと報告されています。海の日に、暮らしへ水辺を取り入れる小さな工夫を。
海の日の今日、海辺や川のほとりで過ごしていらっしゃる方もいるかもしれません。水のそばに立つと、理由もなく肩の力が抜け、呼吸が深くなる——あの感覚は気のせいではありません。海や川といった自然の水辺を訪れる頻度が高い人ほど、心が健やかで落ち込みが少ない傾向にあることが、近年の研究で報告されています。
水辺のそばで心がほどける、その理由
イギリスのエクセター大学のマシュー・ホワイト氏らの研究チームは、18か国・約1万6千人を対象にした大規模な調査で、海・川・湖などの水辺を日常的に訪れる人ほど、心の健やかさ(ウェルビーイング)が高く、心の不調が少ない傾向にあったと報告しています。緑地にも同じような関わりが見られましたが、水辺には水辺ならではの静けさがあります。なぜ水がこれほど心を落ち着かせてくれるのか、その仕組みはまだ完全には解明されていません。けれど、絶えず形を変える波の音、光がゆらめく水面、遠くまで開けた視界——そうした要素が、張りつめた意識をゆっくりとほどいていくのだろうと考えられています。
海の日という節目は、その恩恵を思い出すのにふさわしい一日です。とはいえ、誰もが海へ出かけられるわけではありません。うれしいことに、研究では海や大きな川だけでなく、池や噴水のような身近な水辺にも似た傾向があることが示唆されています。つまり、水辺の心地よさは、暮らしのなかにささやかに招き入れることができるのです。
たとえば、口の広いガラスの器に水を張り、庭やベランダで摘んだ花を一輪、そっと浮かべてみる。三分ほど、水面に映る光のゆらぎをただ眺める。それだけで、部屋のなかに小さな水辺が生まれます。窓を開けて雨や川の水音に耳を澄ませるのでもいい。大切なのは、水のそばにいるときのあの「間」を、意識して自分に贈ることです。
日常はいつも、私たちを前へ前へと急かします。だからこそ、水のそばで訪れるような、何もしなくてよい静かな時間が要るのだと思います。海の日の今日、一輪の花を浮かべた水の器の前で、深く息をひとつ。それは大げさな儀式ではなく、心に余白を取り戻すための、ごく私的なリチュアルのひとつです。今日のどこかに、静かな祝福が咲いていますように。
Questions
- 海のそばにいるとなぜ落ち着くのですか?
- 海や川など自然の水辺を訪れる頻度が高い人ほど、心の健やかさが高く心の不調が少ないと18か国の調査で報告されています。理由は完全には解明されていませんが、水の音や光のゆらぎ、視界の広がりなどが関わると考えられています。
- 海まで行けなくても同じように過ごせますか?
- 研究では、海や川だけでなく池や噴水など身近な水辺にも同様の傾向が示唆されています。器に張った水に花を浮かべる、水音を流すなど、暮らしのなかで水辺の感覚を小さく取り入れることができます。
References
参考文献・出典
- Associations between green/blue spaces and mental health across 18 countries(White MP, Elliott LR, Grellier J ほか)(Scientific Reports 11:8903、2021)
Author
Tomoyo Michishita
Maison Élanique Inc. 代表。愛に美しいかたちを与えるメゾンとして、 花と香りの傍らで綴っています。