Céléjour
暮らしのこと

お中元シーズンに花を贈るという、感謝を言葉にしない伝え方

七月に入ると、百貨店のカタログや取引先からのお中元の案内が、静かに届き始めます。何を贈ろうかと迷う時間そのものが、実はもう感謝の始まりなのかもしれません。お中元に花を選ぶという選択は、まだ少数派です。けれど、消えてなくなるものだからこそ伝わる気持ちがあるのではないかと、私たちは考えています。

花をお中元に選ぶということ

定番の贈り物には、実用的な良さがあります。けれど実用性は、時に贈る側の顔を見えにくくしてしまいます。一方、花は日持ちがしません。数日で萎れ、いずれ手放すことになります。だからこそ、花を選んだという事実そのものに、贈り手の気持ちが宿ります。「役に立つもの」ではなく「今、あなたのことを想っている」という一瞬を届けること──それが、花を贈り物に選ぶということの、静かな核心なのだと思います。

ノースカロライナ大学のセーラ・アルゴー氏らの研究チームは、パートナー同士が感謝の気持ちを言葉や行動で伝えあった場合、その後半年にわたって関係の満足度が高まったと報告しています。感謝は、伝える相手を選ばずに機能するのかもしれません。お中元という形式に感謝の気持ちをのせるとき、贈るものそのものよりも「伝えようとした」という行為が、相手の記憶に残るのではないでしょうか。

のし紙の代わりに、三行の言葉を

のし紙に印刷された定型の挨拶文だけでは、伝えきれないものがあります。もし今年、花をお中元に選ぶなら、小さなカードに三行だけ、手書きの言葉を添えてみてください。「暑い日が続きますね」「いつもありがとうございます」──それだけで十分です。三分あればできることです。花束の色や大きさよりも、その三行のほうが、きっと長く記憶に残ります。

私たちは、花を「贈るためのもの」としてだけでなく、「想いにかたちを与えるための道具」として扱いたいと考えています。お中元という古くからの習慣も、本来はそうした気持ちの器だったはずです。今年の夏、誰かに感謝を伝えるとき、その器として花を選んでいただけたなら──今日のどこかに、静かな祝福が咲いていますように。

参考:Algoe, S. B., Fredrickson, B. L., & Gable, S. L.(2013)「The social functions of the emotion of gratitude via expression」Emotion誌